テキスト2004
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かんし命〈しようせんせいしょう菊桃|果樹から花木へ|今から四千年ほど昔、中国の黄河上流の高原地帯(甘粛省、陳西省)で桃が果樹として栽培されはじめた。今では黄土高原とよばれる不毛な乾燥地帯だが、その頃は松や柏の森林、その周囲には広大な草原がひろがっていたそうである。中国文明は青銅器時代から鉄器時代への進歩の過程で森林を失っていった。そして黄河も古い時代には単に「河」とよばれていたが、漢時代頃になると、上流の黄土高原の地表の土が浸食されて流れの色が黄土色に変わり「黄河」というようになったらしい。桃は果樹として大切なだけでなく花も美しい。中国で栽培がひろがると春の花として詩や絵両の題材になり花木(花桃)として観賞する品種も出てくる。かなり古くからのことだと思えるが、文献に出てくるのは十七世短になってからのことである日本でも園芸が発達した江戸時代になると花桃の記録も多くなる。作例の菊桃もその一つである。普通の花桃の花弁は丸いが、菊桃は細長い菊咲き品種である。花屋にはあまり出てこない桃なので、とり合わせとして白椿をそえて、菊桃を目立たせるよういけてみた。花材菊桃布日筒郡一花瓶白棒(素子作)3 ィE器。

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