テキスト2003
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匂い立つ品格寒風の中で梅の花が咲きはじめた。離れていても風が香りを運んできてくれる。でも雲龍梅はひときわその香りが甘く強い。目をつむって梅の香りを嘆いでいると、なんともいえない豊かな気持になってくる。そして日を聞けると、そこに小さな梅の花が凍として咲いている。九頁に雲龍梅の生花をいけているが、その時省いた小枝で小品花をつくった。東洋の気高いらっ清ぱす楚いせなん梅に、西洋の春の花である刑夙水仙をとりあわせている。それぞれを別々の器にいけて並べることで、にいけたのとは違ったそれぞれの良さが表現できる。器に選んだのは漆器のお椀で、丸みのある形は、上品さと可愛らしきを兼ね備えていて、黒、赤、金のバランスが華やかさと落ち着きを感じさせてくれる。、」の漆器は京都の老舗「象彦」さんのもので、西村さんは、代々当流師範として御活躍をなさっている。同じ器を二つ使ってそれぞれに一種ずつの花をいけて二瓶飾りにする場合、お互いの花の個性を際立たせるように工夫すると良い。漆器には底に当てものをしてから小さな剣山を置いている。〈表紙の花V和則一つの器何しげみとみない風に〈2頁の花V泌々と見つめるいけばな、ほっとするいけばな。私達は自分でも数え上げられないほど多くの種類の花を、様々な形にいけて周囲の環境を作り出している。そして、いけばな展の会場で初めて出逢った珍しい花、こんな形にもいけられるのかと感心するほど手のこんだいけばなもある。だが私達の日常に必要なのは、二頁の作例のような、ほっとする花である。アネモネは金鳳花科一輪草属の草花で、地中海東南部が原産地のアネモネ・コロナリアがまず栽培化され、多くの園芸品種が生まれた。現在切花の主流になっているのはモナ・リザという品種で花の大きさは開くと十rぐらいになる。ハウス栽培では十月から四月まで出荷されているが、花壇には九月に球根を植えると早春に開花する。従って私達はアネモネを早春の花という季節感をもっている。実際にまだ寒さから解放されていない頃にアネモネがいけられているのを見ると、ほっとした気分になる。一種で何色もあるアネモネには他の花材をとりあわせなくてすむ。作例のように玉羊歯をそえるだけで十分気持が和らぐのである。花材アネモネ玉羊歯花器灰色紬水盤梅うにんりゅは・←多ばいくの品種があるが、なか2

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