テキスト2003
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今年のお月見は九月十一日が十五夜(中秋の名月)で、ト月八Uが十三夜(後の月見)となっている。残暑がいつまでも続いた九月初旬は、今ひとつお月見という雰囲気ではなかったので十三夜を楽しみにしている。お月見の夜、東の山の稜線から突然、まん九の大きな月が出てくる瞬間を見たことがある人なら、誰しもその不思議な光景に興奮した覚、えがおありだと思う。やがてその興奮がおさまり、虫の音に、ふと我に帰るころには、月の光がしみじみと心に染み通ってくる。そんなお月見のHには、たっぷりと水をはった水盤に、薄の穂を立て、秋の花をいけておきたい。作例の薄は小型だが穂の色が濃く美しい。手で穂の一本一本を前川笠江右に少し開けている。その薄の赤みを帯びた仏きび諺に合わせて、豚脂色の穂をもっ黍と、赤色濃淡の菊を選んだ。菊の葉は水をつけながら充分に広げておき、器の後方から前方へゆったりと空間を開けて挿している。黍の穂は内側から外側へ伸び広がるように高さを変えている。花材尾花(薄)花器ピンク二輪菊黒紬水盤黍赤菊月見の花和則11

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