テキスト2003
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いぷ,むなかまどともしび涼しさとともに〈表紙の花〉鬼燈(ほおずき)〈2頁の花V蒸し蒸しした暑さは九月の下旬にならないと京都の市中からは退いてくれない。だが錦小路の八百屋に大粒の丹波栗が出はじめると、京都にも本当の秋が巡ってきたのを感じる。そんな想いが初秋から栗をいけさせるのだろう。そしてまだ越が緑色の栗の実を挿し、紅葉を添えたくなる。だが京都の紅葉の名所はまだ時季が早い。でも有り難いことに楓の紅葉ではないにしても、北海道や東北地方の深山から切り出されてくる名樟の紅葉が手に入る。栗には、冴えた色の紅葉があれば他に花はいらない。黒地の焼し焼に向い線の入った大谷焼の角花瓶にこのとり合わせがよく合う。のびのびといけたい。花器大谷焼角花瓶矢野款ほおずきは普通酸柴と書くが、鬼燈は、果皮が剥げ落ちて葉脈だけになると、中の実が赤い燈火のように透けて見える。それが船燈である。パンパスと黄事乞そえると鮮やかな色彩の初秋のいけばなとなる。鬼燈花器灰青色紬広口花瓶花材栗七竃紅葉花材パンパス黄菊作2

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