テキスト2002
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花の形をした日本の干菓子を手渡すと笑顔がのぞく。小さな花事乞一人一人にプレゼントすると大切に握りしめて「メルシl」と小さな声が返ってきた。「おうちに帰ったらコップに挿して毎日お水をかえてあげてね。」子供達に手渡したアネモネやガーベラ、パラ、フリージアなどはラパト郊外の園芸農場で育てられている。居間に飾るには作例のような小さなここの主人はフランス人女性。花は主に王宮やホテルに行くが、こうした農場のおかげで街の花市場にも新鮮な切り花が並ぶようになった。私たちが活けた花はこの園芸農場と王様の苗木農場、そして個人の庭で採集させてもらった。日本ではいけたことのないアーモンドの花も。私達は活けることを大いに楽しんだ。しかし、モロッコの菓子にはアーモンドがよく使われる。その大切なアーモンドの枝が切られて査に入れてあるのは、現地の人にはカルチャーショックだったと思つ。でも美しさは心に届いているだろう。緑豊かな日本で生まれたいけばなは、花を切り取ることで植物の姿に美を見出そうとする。そして、モロツコの人達は大地に根を張る樹木に心の安らぎを求める。お互いの文化の交流から、私達は忘れかけていた木々との交わ均を思いだし、モロッコの子供達は花を身近に見つめる楽しさを体験してくれた。彼らが大人になっても、遠く日の昇る固から来た人達が活けた花のことと、つかの間の楽しい交流を心の中に大切にしまっておいてくれることを願う。モロッコの器にいけるやし八日頁の花〉榔子の仲間の花序は、生まれ出てくるとき、数枚の大きな査に包まれているらしい。モロッコでも2メートル近い榔子の葱を切らせてもらった。日本に持って帰りたかったが、直が似合う。堅くて丈夫な直に守られた花は風によって受粉し、様々な種類の実となる。モロッコのナツメヤシの実(デlツ)は甘くてとてもおいしかった。花材榔子の直ストレリチアアジアンタム花器モロッコ製陶鉢〈円頁の花V花展会場のモハメッド五世劇場では連日様々な演劇が公演されていた。モロッコ独立への道を開いたモハメツド五世の廟墓はラパトにあるが、中央に枢が市蓋臨された部屋は息をのむ美しきだった。そしてモハメッド五世の子で現国王の父、ハサン二世の造ったモスクがカサ9フランカにあるが、この大モスクの礼拝堂にはイスラム信徒二万五千人が礼拝でき、大理石が敷きつめられた広場には8万人の巡礼者が集まれる。人々の信望を集めた偉大なスルタンへの祈りを込めて蕃識の小品花をいけた。花材蕃蔽二色レッドピlンズ花器モロッコ製蓋付陶鉢和則11

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