テキスト2002
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すも花の出現梨の花は、同じ普薮科の桜や杏、色李とよく似ているので遠目で見ると区別がつかないことがある。そして、それらの大樹が春を迎えて一斉に咲き満ちる時、その姿は人間にも生命力の輝きを示してくれているように見える。花はやがて実を結び、他の晴乳類〈2頁の花〉や鳥、見虫にまでも生命の糧を与えてくれている。大きく地上から笠え立つ大きな花木。地を覆い埋めつくすように咲き拡がる草花。だが花の歴史は地球四十億年の歴史から見ると比較的新しく、現在から約一億年ぐらい以前になってようやく花が誕生する。それ以前は地球上には一輪の花も見当たらなかったということらしい。冷たく単調で暗い緑しか見られなかったのである。大きいばかりで脳の小さかった腿虫類よ均進化した鳥や晴乳類の脳は乏且の酸素と栄養価の高い食物が必要だったが、その生存と進化を助けてくれたのが花を咲かせる植物の出現だったのである。私は花をいけるようになってから生命の歴史に興味を持つようになったが、知りたくてたまらなかったような学説やその証明が二十世紀になって積み上げられた。梨の花の解説にうつろう。純白で薄くて繊細な梨の花でも、作例のような枝に咲き満ちると、やがて秋に三百年前の初代冨春軒仙渓がはしっかり金大るのだと回やっと優しくめていることを感じる。その梨の花と対照的な色の強いグロリオlサをとり合わせてもまとまるのはそのような強さを持っているからなのだろう。花材梨グロリオlサ花器碧色紬角瓶小日開花昨年の桑原専慶流展では小品席にかなり手のこんだ花が並んだ。そしてどの小品花もそれぞれ違ったが、それは各個人の創意と工夫、工夫はその小品花をいけ上げて行く過程もよく考えた上での完成でなくては失敗に終る。あの小品席を見てわかることは、小品花には定形がなさそうだということである。あえて定形化を求めるなら、この頁のような花型もその一例となるかもしれない。いけばなには「生花」という三本の線だけで構成し得る花型がある。それはその花材の出生を正確に見きわめた上で完成している。和則の考えている花型もそうであってほしい。花材アネモネホワイト・アリウムアンスリュlム枯葉梅花皮粕抹茶碗イE器〈3頁の花〉和則作お鰯たやかな美しさの中にも力強さを秘3

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