テキスト2002
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椿とアイリスを見つめながら何もしなくてもよさそ、つな時間、たとえ短時間でも本を読んでしまう。読むことは私にとって最Bも身近にころがっている悦楽である。此頃二、三十年、或はもっと昔に読んだ本を読み返してみたりしている。あらためて日を通してみると、この本にこんなことが書いであったのかと自分の忘れっぽきに驚く。だが一冊の本を読んでからの時間の経過、三十年、四十年の聞には他の本を沢山読む。そこから得た知識が積み重なって、北旦読んだ本を新しく理解しなおすことができるようになることもある。復習というのだろうか。そんな時、歳月の与えてくれた思恵を有難く思つ。私のいけばなについても思い返してみると同じようなことに行き当たることがある。先代はよく「いけばなの真実」と云う言葉を使っていたが、その「真実」ということには様々な意味が含まれていたように回心う。誰もその真実はつかみとれないが牒公叩に求めることはできる。その心が大切だということなのである。そして時たま私自身の中にその姿が見えることがある。遠い道ではあるが求め続けるのはこころよいものである。花材白椿アイリス花器柿色粕花瓶9

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