テキスト2002
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ぼたんいちげアネモネ浅い緑色のシンピジウムを、花器の左後に一本と、申央右寄りに一本と、それぞれの一番下の花が水際になるくらいの長さに立て、その足元から左右に広がるようにシンピジウムの葉を入れる。大きく空いた左側の中央から前方にかけてと右前方にアネモ、不を七本入れている。アネモネとシンピジウムは、強い個性を持つ美しい花という点で共通点があり、器の上でもよく釣り合いがとれている。シンピジウムの大輪種はインド、ミャンマー、タイ、ベトナム、中国南部などに自生する大型で美しいシンピジウムの野生種がもとになっている。一方、アネモネは地中海省芹に自生するアネモネ・コロナリア(和名、牡丹一華)がもととなる。まったく違う地域の花を出会わせる楽しみもいけばなの魅力の一つといえるが、美しい調和を生むのはなかなか難しい。理屈ではなく、美しさを感じとる心を、日頃から養っておくことが大切だ。私たちは花や物や人に対して、どれだけ美しさを見つけているだろうか。「週刊朝日E手・世界の植物」には野性のアネモネ・コロナリアの写真が載っている。広大な野原に赤やピンクのアネモネが群生している。写込の解説には「イスラエルはガリ八3頁の花〉和則ラヤ湖の西側mJほどのところにある村のはずれ。レバノン、シリア、ヨルダンとの国境をたどるかたちでゴラン高原を巡り、日が沈む前にようやくたどりついた場所だった。逆光を受けて咲くボタンイチゲの群生は、政情不安な国を旅する緊張感ゲ乞和らげてくれた。(3月上旬)」と書かれている。さらにこのアネモネ・コロナリアはパレスチナ地方のいたるところに咲いており、「新約聖書」のマタイ福音書の中で「ソロモンの栄華のすべてをもってしても凌駕できない」といわれた「野の百合」は、多くの専門家によると、この花であろうと考えられているとも書かれている。アネモネはギリシャ語のアネモス(風)が語原で、神話や伝説には次の二つの物語が知られている。一つはアネモネというニンフ(精霊)の物語で、被女は大地に優しく息を吹きかけて花を咲かせる風の神ゼフユルスに愛されていた。ところが催女が仕える花の女神フローラに嫉妬され追放されてしまっ。アネモネを愛するゼフユルスは困ってしまうが、花の女神と平和を保つために仕方なく彼女の姿をアネモネの花に変えたといわれている。もう一つのお話はギリシャ神話に出てくる美少年アドニスの物語。美の女神アフロディテはある日、息子エロスの射た矢が誤って彼女の3

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