テキスト2001
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いわ申るすさやふうまちゃづくな宇かまどだくさんれんげじねんほ〈おおやまには一種独特のスタイルがある。十代の終り頃、伏見の中村慶松先生の稽古場に入門し、その後梓の会で先代に師事し、現在まで五十年近く生花を続けておられる。その長い間に表紙の七竃のような生花のスタイルができ上がった。当流の型は守られているが、枝の特徴のとらえ方、捌き方、間のとり方で先代とも違い、私の生花とも異った持味が出ている。この生花は今年の日本いけばな芸術展への出品作だったが終了後私の家の床の間に飾らせて頂いた。掛軸は富田渓仙の「帆風図』とい、?水墨両で、大河の上流の新緑を描いたものだろう。日本いけばな芸術展の会場でひろがりはじめた七竃の新緑は、床の間でも日に日に成長し緑も鮮やかになって行く。水墨画と生花。いいとり合わせである。(五月五日撮影)十九世紀の終り頃に建った私の家は至極住み心地がいい。所謂京都の町家造りだが、分は数寄屋風になっている。内玄関として使っているのは「はしり』(京造りの家の通り庭の一部で台所部分)で天井はなく、さんの生花内玄関の掛花〈2頁の花〉〈表紙の花〉さんの生花一部二階の大屋根まで吹き抜けになっている。壁は中塗り仕上げにしているので作例のような掛花がよくひき立つ。だが直に龍や掛花器をかけると、水がこぼれたり、こすれたりして壁が傷つくので、ご覧のような松丸太の削ったのや、自然木の板を折釘にかけ、その上に花龍や掛花器をかけている。ここには作例のように軽い花を盛沢山いけたり、小さな花器に椿一輪、社若一輪に葉をそえたり、とその季の思いつきを様々にいけている。古い家だが手入れを怠らないで、いつまでも住む楽しみを味わいたいと思っている。花材山吹花器竹鎚六月、香りのいい山の花は大山蓮華と笹百合。作例にいけた百合は「スウィlト・メモリー」。花の形や葉のつき具合から見ると日本の笹百合と、何か他の百合を交配させたらしいヨーロッパの百合である。大山蓮華が咲く頃には笹百合も咲く。多少他の遺伝子がまじっていてもスウィlト・メモリーは大山蓮華とのうつりがよく、香りも楽しめる。花材大山蓮華スウィlト・メモリー花器桃紅紬花瓶クレマチス3頁の花〉花の香〈2

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