テキスト2001
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ぷつL−かん岳町,もの冬の生凍てつ物く真和冬則の大地に根をおろし、寒さにも負けずに育つ強靭な性質。大根や蕪などの冬野菜は、霜が降りると廿味が増して柔らかくなると言われるように、まさに冬の生物として私達の食卓に元気を運んでくれる。一七一六年に京都の錦小路の青物問屋に生まれた伊藤若沖は、家業を弟に譲って画家となり、異色の自由奔放な画風で名を成したが、野菜を主人公にした楽しい絵を残している。ありきたりの物の見方にとらわれず、写生を積み重ねる中で対象物の真の姿を掴みとる姿勢から、独自の境地に到達した若沖であるが、野菜に固まれて育つ中で、自然がっくりだすものの美しさを肌で感じとっていたからこそ、じっくり見つめることを生涯大切にしたのだろう。奇をてらうのではなく、ものの内にある美しさを表に現わす。いけばなの姿勢にも通じることではないだろうか。この冬はいろんな生物を頂いた。溜塗の板の端に大きな晩白柚を置き、ため白りばんべい申う仏手柑をもたせかける。その後に実のついた春蘭を根洗いして世き、反対側に小さな大根と益事』並べる。大きく聞いた椿の花に綿で水をあてて銀紙で包んで置き、温もりを添えた。花材養開晩白柚仏手柑大根蕪椿9

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