テキスト2001
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はい〈しん桑原和則出品作〈刊頁上の花〉大台ヶ原の山小屋から散策路を抜けていくと急に眺望の開けるところがあり、暫厘絶壁の上から深い谷底を見降ろしたことがある。鎖につかまり腹這いになって覗きこんだ時、とても安らかな気持ちになったのを覚えている。足は恐怖でふるえているのに、心は日の前に広がる無垢な自然の美しさと一つになることを願っていた。険しい山聞を走り抜ける雨風をも友とするような、芯の太い白由開達なエネルギーが満ちていて、なんともいえない清々しい空気を味わった。桑原棲子出品作〈叩頁下の花〉今回、花道家として最初で最後となるような這柏槙の老木に出会い、会場の入口にいけた。いつか感じた深山の空気を思い出しながら老木の枝に鋲を人れた時、父の二十年の節Hは私にとっても−きな節目となった。v−T文・和則花材這柏槙花器禁焼深鉢矢野款一作遥かな山波のその重なりを思わせる花器の上庁に、天空の花のように色とりどりの蘭の花が咲いている。蘭の根には丁寧に水苔が巻かれ、朝タの霧吹きで元気に次々と花を咲かせていた。「天空の花」という彼女の願いは花屋の苦労で実現した。今回五十種を超す蘭が集められ会場で美しく咲いていたが、いけ手の技量がなければ花屋の苦労は報われない。棲子は会期中多くの花を生き返らせていた。身についた花の扱いは流内の模範となっている。花材大紫式部の実オンシジウム数種ミルトニア数種カトレアシプリペジウム花器色土彩一屑壷蝋梅の幹宮下善爾作文・和則10

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