テキスト2000
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榛椿花型草型副流し一種挿し花器褐色焼締横長鉢晩秋から初冬にかけて、いける楽しみを待ちわびるような花が多い。榛もその一つだが、夏の聞に蓄えこんでこれから休眠期に入ろうとする姿である。仕事を終えた葉は枝先から離れ落ち、翌年の春に咲く細長い花芽はしっかりしたオイルクロスのような鱗に包まれている。この榛と対照的なのが椿である。夏の聞に榛と同じようにエネルギーを貯めこむが、艶やかな常緑の葉の並んだ枝先にしっとりと重みのある花が初冬になると咲きはじめる。枝先に僅かな葉を残した榛と、聞きはじめた椿の花が出逢つのはほんの一季に過ぎない。円本の風土、季節のうちでは、様々な花が行き交い出逢っている。それが花のとり合わせであり、花をいける楽しみ喜びでもある。真、副、留の三枝で構成できるシンプルな生花にそんな深い想いのこもった姿を表し得るのである。r6

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