テキスト2000
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必ぼろげ枇杷の種ぴわ枇杷の種は大きい。子供の頃、この種を植えておけば家の庭にもきっと実がなるにちがいないと期待をこめて土に埋め、水をやった記憶。私もそんなことをした、とい弓入は多いと思う。身近な果樹「枇杷」は日本や中国の揚子江位芹に自生している韮車微科枇杷属の常緑樹である。だが今のようなおいしい枇杷が栽培されるようになったのは江戸時代の終り頃からである。いけばなには室町時代、大葉物として立花に葉だけを組んで使われはじめた。おそらく実の小さい野生の枇杷だったのだろう。江戸時代の中頃からは中国風な文人花に良い枝振りを選んでいけられるようになった。現在あまり使われる花材ではなくなったが初夏の実付き枝、或は初冬に奮をつけた頃、葉がよど締まった枝であれば季節の花をそ、えると上品で落ちついた一瓶となる。作例にも菊二色を季節の花としてとり合わせてみた。若草色の大輪菊は近年栽培されるようになった品種だが、枇杷と菊の深緑色が葉色のひき立て役として丁度よかったのではないかと回心う。花材枇杷花器たちゃぴつ菊二色溜め塗茶植灯火に親しみ過ぎて私がテキストを書くようになって二十年を週きた。毎月大変でしょうと云われたりす’るが、楽しんで書いている部分もある。この仕事を続けている聞に私の生活時間の使い方が随分変わってしまった。遅寝遅起になったのと読書傾向の二つである。原稿持きは夜の方がはかどるので明け方まで続けることが多い。遅寝の癖がつくと何もなくても夜本を読む時間が多くなる。面白いと二時、三時まで眠るのを忘れてしまう。暇潰しのような本もよく読むが、テキスト書きの歩手句に読みはじめた本の範囲がひろがって書棚におさまりきらなくなってしまった。いけばなを始めた頃は、いけばなの歴史や理論書で事足りていたが、かなり特異な文化であるいけばなは通り一遍の記述だけでは納得行かない面が多すぎる。円分でも成山心するほど様々な本から色々なことを学んだが、お蔭で自分の道だけは臨気ながら見、えてきたようである。いけばなの道に踏み出さなかったらそんなに勉強しなかっただろう。私は師範進級式の時皆さんに、花をいけてるだけでなく、花に関する様々なことを勉強しなさいと云っているが、それは自分の内側に向けた大変面白く楽しい発信なのである。(ホ符き)4

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