テキスト2000
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花のかけ橋(九・十頁仙渓十・十一頁和慰九月十四日ー九月十九日いけばなは、その形をとりはじめる時代よりもっと昔、古代の人々の心の中にすでに蔚していた。弥生の壷の秋草文。万葉の詩歌、平安時代に入ると瓶にいけられた花の姿が美しい言葉で文章に綴られるようになる。花への想いは親から子へと代々伝えられてきたが、その「かけ橋」は、いけばなの「かけ橋」としては、まだか細いものだった。花への想いが、いけばなとい、っ名の橋になったのはようやく近世、室町時代になってからのことである。最初は賀茂川に、或はもっと細い小川にかけられた小さな橋だったかもしれないが、代を重ねて行くうちに次第に幅広く、しっかりした橋となった。私達が現在いけている花の技、美意識は何本もの、何代もの先人達が架けてくれた橋を渡ってたどりついた伝統美なのである。第二次世界大戦をはさんで私の育った時代は日本人の価値観が大きく揺れ動き、自分自身何を目処に生きて行かなければならないのか全くつかみどころのない空白期だった。幸いにして私は「いけばな」という目処を得た。そして「いけばな」から多くの価値あるものを与えられた。今回の「花のかけ橋」展ではそんな気持のうちで花をいけこみ、いけた花の手入れをしながら過ごしてきた。先代から渡して頂いた尊い価値。もし私にもそれにつけ加えられるものがあれば「花のかけ橋」を渡って次代に贈りたい。又御後援頂いた流内の皆様、お世話になった沢山の方に心から感謝を申し上げる。出品作九頁仙渓小品投入十頁仙渓岳樺立花大作花器、矢野款一作十二頁和則自由花高島屋京都グランドホlル十一頁和則水物生花五瓶飾りめど

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