テキスト2000
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ぎ〈ろ柘檎ざくろ〈叩頁の花〉アメリカに移民した一人のアルメニア人が、故郷のような大きくておいしい柘植を作ろうと思って栽培をはじめるのだが努力の甲斐もなく失敗に終る。そこに到るまでの人間模様を描いた小説を読んだことがある。そこにモデルとして描かれたアルメニア人の柘棺園は成功しなかったことになっているが、作例に使った柘棺はアメリカ産である。ひょっとすると小説どおり失敗に終ったのではなく、成功して、その柘棺園から送られてきたものかもしれない。そんなことを思い出しながら、いけられて行く柘棺を眺めているのは楽しいことである。アルメニア、その近辺の小アジア原産の柘植は中国を経由して平ム女時代に日本に渡来した。中国では果樹としてよりも花木として植栽することが多く、日本でもその傾向を、つけて花柘栂が多い。従ってその実は輸入柘棺の実とくらべると小さくて色艶もよくないが、風情としては親しみのもてる実である。柘棺の解説が長くなったが白花のアンスリュlムと、向斑の美しいドラセナ・サンデリアナをいけた盛花の聞に枝付きの柘棺をいけまじえるよりも、作例のように下にころがすように置いた方が形はよかった。10

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