テキスト1999
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雑ぎっ駁ば〈な知識しか持ち合わせていなこころ十年ほど前に「花ごころ味ごころ」とい、っ本を書いた。私の知っている四季の料理の作り方と、その折々の随想を一冊にまとめたものである。「花」と「味」についてなら質問に答えることはできるが、「花」と「味」につけた「こころ」のことを聞かれると自分でも納得できる答、えがでてこない。そんな私に先日「心」についての講演の依頼があった。いい勉強の機会になると思って引き受けはしたがい私の頭で対応できるテlマではなさそ、つである。有史以来心について論説した書物は数限りなく多い。その中でふと思い出したのは昔品在ム時代に友達が読んでいたアリストテレス(古代ギリシアの哲金者・紀元前三八四|三二二)の「心とは何か」とい、っ本である。幸い新訳が文庫本になっているので手に入ったが難解な原著がかなりわかりやすく翻訳されている。アリストテレスによると生命のあるものは同時に必ず心をそなえており、心の第一の能力は栄章一取能力と繁殖能力だとしている。それは人間と同じように生命をもっ植物にも動物にも共通した能力であり、栄養を摂取しながら生命体を維持し、人が人を、猫が舗を、桜が桜を生んで、10

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