テキスト1998
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蘭について〈秋口から変色し始めるが、本の枝に青みがかかった紫、鮮紅色、朱色、黄色に緑色の葉もまじり、大葉もあれば小葉もあって見飽きない花材である。作例は十一月の半ば過ぎ、もう初冬に入った最後の丸葉の木を使った投入である。葉は色も大きさも揃っていたので全面を見せるようにいけ、黄色と白の糸菊をとり合わせ、秋の名残の一瓶である。花材丸葉の木花器淡青色紬花瓶蘭科は約八OO属、二五、000種という大家族で世界の隅々まで野生種が分布している。その上それらを母種として交配した園芸品種が毎年作出されるので一体どれぐらいの品種数になるのかわからないらしい。そのうち、いけばなによく使われているのはエピデンドルム、オンシジュlム、パンダ、カトレア、デンドロビュlム、ファレノプシス(胡蝶蘭)、パフィオペディルム、ミルトニア、シンピジュlム(春蘭や寒蘭も仲間)等の九属ではないかと思う。この九属だけに絞っても、切花用に園芸栽培されている品種の数は一属十種としても約百種類になる。少なめに見ても、それだけの種類の糸菊(白−tg4頁の花〉蘭が私達の目の前を通り過ぎて行っているのである。作例のオンシジュlムも大家族で母国はフロリダ、メキシコからブラジル、アルゼンチン北部に至る熱帯、亜軌…帯の低地から高山地域にまで分布している。私達がオンシジュlムとして使っているのは主として黄色種だが、花色は白からピンク、赤、紫、茶色と殆ど揃っていて、花の大きさも十凹ぐらいの小型から七仰の大型までと変化が多い。そして開花期は品種によって、春夏秋冬の四季にわかれているので一年中どれかの種類が咲いている。最近少量だが花屋に出はじめた品種で唇弁が白くて側弁が茶色がかっていて良い匂いのするオンシジュームもある。色々なオンシジュiムがあることを説明したが、いけばなに使うのは何と云っても花径が一1一二仰の黄花種で、五、六卜叩の花茎とその分枝に多数の花をつけて咲く姿形は他の花材の持ち合わせていない特徴である。作例には強い色の赤鶏頭をとり合わせてみたが、その強さを小さい黄花の群がりが柔らげ、肌寒さを感じはじめた初冬に暖かみをそえている。花材オンシジュlム鶏頭ミリオクラダス花器淡紫色波文内色紬深鉢4

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