テキスト1998
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とくさおもと花より葉っぱ表紙私達は周囲の様々な植物と共に暮らしている。そして、それらの植物が特定の時期に咲かせる花を見る期間よりも、葉を眺めて過ごす期間の方がずっと長い。花はその植物の生命を象徴する存在かもしれないが、私達が普段つき合っているのは緑の葉の方である。その深いつながりを、率直に捉えたのが葉蘭の生花や松一色の立花といういけばなの花型なのである。又、人の心と緑の葉の結びつきを大切なものと見る球先見は、日本の作庭にも表明されている。濃い緑の常緑樹が主体になっていて、私の家の庭でも椿や蹄蹄の花は時折の季節を報らせる点長と云っていい。そして生命のサイクルの短かい草花は、あしらいとしてしか使われていない。草本類で植えこまれるのは木賊や万年青、葉蘭のように一年中青々とした緑の見られるものが基本になっている。いけばなでの葉の大切さはいうまでもないことだが、盆栽や鉢植の観葉植物の需要が多いのも当然のことで、別に花が咲いていなくて点描物から受ける精神的影響は大きい。作例に使ったコレウス(紫蘇科)には幾つかの色変わりがあって、鉢植えでよく売られている。白地に緑の斑のあるアンスリュi2

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