テキスト1997
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術羽恨〈3頁の花〉松の内を過ぎて〈5点の花〉化村衝羽恨(つくばね)花器瑠明色柚細口花瓶恥には卜八も年下の妹がいたのでお正月には羽恨衝きの相手をよくつとめさせられた。仲のいい従姉妹と三人でやるのだが衝きそこなうと顔に墨を塗られる。二人は負けても顔に墨をつけさせないが私が負けると二人で喜んで墨を塗りにくる。私の顔に塗る所がなくなればお終いになるのだが、早く切り上げたいときはわざと負け続けて顔を真黒にさせて存ばせてやる。二人共五卜を過ぎたが、求だに私の顔に些を喰りたそうな気持が心のどこかにひそんでいるらしい。会うといつもそんな顔で私を見ている。〈4只の花〉花村蛇の目松化器オレンジ色陶花瓶花村校若松花器ト亦ガラス花鉢七日を過ぎると私の家でも花はいけかえるが、松、斤合、山酬の他にまだ使えるものは簡単な花型にして飾りなおしている。その際花器も明るい色のくだけたものに変える。カトレア円打An「アンファレ六砕し弟幸三、彼は素子の妹章子の古γ王弟俊介とは小学校時分は陥一嘩ばかりしていたが、二人共中学生になって以来喧嘩らしい喧嘩をした覚えがで気まずい間柄になったことがなかった。この二人とはいつ会ってもいい時間を過ごせた。俊介は一昨年の暮、幸三は昨年の十一月に亡くなったが、亡くなってみると二人がどんな人間だったのか、ふっと仕事の子を休めて追憶していることがある。二人は全くの都会人だった。都会人を、こすっからい人聞のように思っている人もあるかもしれないが、何代も都会でのびのびと暮らしていると、人をかきわけ、押しのけて世間を渡って行こうという人間ではなくなってくる。こういう人達は人当たりはいいが、二人には紳トL性というようなものが具わっていたので、くだけ過ぎず、人の領域に無遠慮に入りこんでくることがなかった。そして美しいものや、崇高なものへの目は聞かれていたので会ったときの話題に事欠かなかった。二人を失なった心の杢洞は大きい。だが弟達が私に残してくれた置土産。それは何だったのだろう。自分の心に問いかけながら包みを開いて見ょう。Rノの弟仙渓』ーーー圃聞...5

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