テキスト1997
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「花ふたり旅」出版記念四年がかりで作り終えた「花ふたり旅」も一一一月中旬に出版することができた。そして流内の皆様の御協力によってこのいけばな展が開催された。ふり返ってみると、四年間の海外での取材は体力には過重な負担だったが、私達が日本のいけばなを考える上では大変得る所の多かった旅だと云えるのではないかと思つ。日本は四季の花に恵まれた素晴らしい風土だと云われているが、方々歩いてみると、どんな苛酷に思える風土にも、そこに住む人々の愛するかけがえのない自然が拡がっている。美しくないのは人聞の汚した自然だけなのである。様々な想いをこのいけばな展に托したのだが幸いなことにそれは御来観いただいた皆様にも通じたのではないかと思う。一緒に旅したような感じがすると仰言る方も多かった。又私達が何を求め、何を伝えようとしているのか共感を得られたようである。会期中、一万一千人をこえる方に御来場頂いたが、中には二度、三度と来場された方もあった。池坊専、氷宗匠もこのいけばな展を興味深く長時間つぶさに見て下さった。「これは桑原専慶流ですね」と云われていたが、確かに当流の特色がはっきりと出たいけばなだった。グループごとの大作というのは、まとめ上げるのが大変だったと思うが、予期以上の出来栄えだった。子供達三人で作ってくれた迎え花も嬉しい贈り物、私達も今後一層いけばなに心を傾けたい。いけばな展仙渓素子記3

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