テキスト1997
19/155

「生欲」立欲というのは決して杭極的に行おうとする気持ということだけではなくて、生きていくことに欲を出す「岳欲」でもあると私は思います。昨年、初めての長男の出産を経験して今までF供を産んだ女性の発言や考え万に対して不思議に思っていたことや、どういう立味だろうと興味を覚えていたことが、なんとなく見えてきた気がするのです。というのも、長男を産んでからよく聞かれる質問の中に「子供を産んで何か変わりましたか?」というのがあるのですが、正直言って何も変わらないというのが本音なのです。というより、自分では子供を産んだからといって、急に自分が成長したとか一人前になったとは思わないのです。それよりたまに息子の顔をジ|ツと見ていると「本当に私が産んだのかな?」と自分でも信じられなくなって、不思議な感覚に包まれることがあります。確かに息子は私がこの世に送り出したという事実は間違いないのですが、それと同時に命の不思議さをもっともっと感じる様になったのです。「全欲」という意味には「本能」に近いニュアンスがあるのですが、はっきりと違うのは人聞が生まれる前から先天的に持っている欲ではなく、脳の最も原初的な部分へ一気に到達後天的に持つようになる欲、つまり「新しい力」一九九七年一月はな覚星人間が生きていく上であるね皮の学何や経験をした中で、死ぬまでに「これだけはしておきたい。これだけはやっておきたい口と願うことなのです。引払は息fが産まれたい下によって、本当に心の奥から「自分の為に何かやりたいJという強い強い気持がソ明いてきているような気がするのです。命というのは紅のような浅はかな了見の人には計り知れない謎だらけの永遠のテーマではありますが、最近我が家の天使憾の寝顔を見ているとついそんな事を考えてしまう今日この頃です。食後、遥か彼方のハドソン実1川川山上1流 まで拡がる夜景に心を奪われながらコーヒーを吸っていると、どこからかマニラ煙草の香りが漂ってくる。祖父の匂いである。嫌煙の街一二lヨークで、未だに好んでマニラ煙草を吸っている人もあるのかと見まわしてみると、四席ほど離れたテーブルの、私達と同年配の夫婦の御主人の方がその香りの発信地らしい。匂いは一瞬のうちに古い記憶を喚び覚まさせる。山明党は思考回路を通過しないで、してしまうのだろうか。他の感覚のI奥3

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る