テキスト1997
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初冬をいけながら毎日どんな花でもいい、少しでもいい、どこかに季節の贈りものをいけておきたい。白玉椿と衆菊。居間にこんな花がいけられていれば、自分は今この年のどの辺で生きているのか静かな実感が得られるだろう。東京ではそろそろ空っ風が吹きはじめていることだろう。霜が降りると北晶装してなかった住宅街の道路は泥んこになってしまっていた。学校に顔を出して銀座に出掛けるとき、新橋か有楽町の駅前で必ず靴を磨かせていた。つまらない想い出かもしれないが、でもそこから七十回過ごしてきた初冬の実感が蘇えってくる。よ椿と集、菊の代りにガーベラとカラーがいけられていたとするとどんな想いが浮かび上がってくるだろうか。白玉椿と集、菊がいけられているより締麗で華やかな集しさが感じられる。だが循環する季節の中で自然に順応して生きているという想いには至らないのではないのだろうか。私は立花や生花が好きなので、自分でいける花は白玉椿と実菊的なものが多い。そして古い水墨画にも惹かれている。と同時にチック・コリア(ピアノ)とゲイリi・バ1トン(ヴイブふulv〈9頁の悲ラフォン)デュエットのジャズも好9

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