テキスト1995
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いつまでも飽きない花人それぞれに好みの花がある。トや酌は秋の半ばから咲き始めて在が終るまで幾種類もの花が次々と咲いて行く。初花から晩春まで約半年の問、絶え間なくいけまなに使われているのだが、何度いけていてもどこか目新しきを感じているのだろう。花の色は白と亦系統しかないのに飽きがこないのは一本一本の枝の変りように定型がないせいだろう。作例に用いたのは棺占用の木瓜で花屋に注文すれば簡単に手に入る紅度のものだが枝振りがまちまちなので稽古場では十人十色のいけ上がりになってしまう。だがよく考えてみると、他の花材にもあてはまることで、菊や水仙、或は猫柳でさえも仔細に見つめるとそれぞれの姿、形に微妙な差があることがわかる。僅かな違いしかない花でも、それが何本も集めていけられ、そしていける人の好み、或は癖が加わると同じとり合わせのいけばなでも、いけ上がった姿にかなり目立った違いが生じてくる。勿論そこには、いけ手の上手、下手が加わるのだが、それは別にして手にした花をよく見つめ、それぞれの花の見所を尊重して花器の上での位置を考えてやれば自然に良い花型が出来上がって行く筈である。盛花や投入では入門して或程度の期間は基本花型に頼って基礎的な花の扱いを習熟する必要はあるが、その後徐々に花の姿をよく見きわめる訓練に入りたい。そういう進み方がいけばなを飽きずに続けられる理由になるのではないかと思う。花器紅彩軸耳付花瓶花村木瓜白菊6

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