テキスト1994
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かせられていた。真夏には工場内の温度はω度から印度ぐらいまで上がっているらしいが朝早くからの重労働から解放されるのが昼食後の三、四十分である。工場の外に出て、風の通りそうな日陰を選んで畳{摂するのだが、その涼しさは、その後味わったことのない懐しい心地良きだった。涼しさにも色々な形がある。室内の温度を機械的に下げてしまうクーラー。中学生の頃勤労動以で味わった重労働の中での涼しさ。日本の風土に培われた古風な涼感の演出。今、占風な涼感の演出は、機械的に室温を下げることで少しずつ失われ始めている。だがクーラーによる涼しさは私達の日常生活から切りはなせなくなってしまった現在、クーラーをかけながらの費戸や簾は何となく空々しい感じがするのではないだろ、っか。といって室内の設えは冬のままで宅温だけ下げて一広を送るというのも味気ない心に苧節の息吹き歩」感じとり乍ら暮らして来た日本の風土の中で、古風な夏仕度に代るものを何か考え出さなければならないような時代になってしまったということらしい〈表紙の花〉花材アンスリュlム〈2頁の花〉キサントソlマ・リンデ花器金彩ガラス鉢アンスリュlムの原産地、熱帯アメリカの原始林の暑さはどれぐらいのものなのだろうか。そんな自然をくっきりと彩っているアンスリュiム、そしてコロンビア原産の爽やかな緑に白斑の鮮やかなキサントソ!?・リンデニーをとり合わせていけてみるのは冷房のょくさいた部屋の中での快さかもしれない。一年中売られているアンスリュlムでもとり合わせと、盟かな想像力によって夏を夏らしくいけることができる。花器もウルリカ・バリ|ンの「インカ」という名のガラス器を選んだ。金色の魚の文様が太陽の国らしく輝いている。花材金鎖カラlの斑入葉花器手付村注綻金鎖はヨーロッパ南部原産の豆科金鎖属の植物で、日本には明治初期には渡米しているが、今迄あまり見かけたことのない活葉小高木である。初夏に開花するが花材としてはまだあまり使われていない。南欧らしい明るさで、丁度その季節が旬の百合類とをとり合わせると、見慣れない外国の花にも季節感の深みが加わって、何となく身近に植え一尉々と咲く黄色の花のかたまりは3

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