テキスト1994
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いろあい〈7頁の花〉花材丸葉の本(紅満作)花器黄褐色粕花瓶京都近辺の落葉樹は十月の末頃から色付き始めるが、今年の反は悶が少なく気温も異常に高かったので、その苧節を迎、えてどんな色に染まるのだ7つつか。私の家の楓も一本は枯れ、他の楓も葉先が茶色になったまま秋が深まってきた。ここ数年、国外で紅葉の季節を過こしている。日本で紅葉の美しいのは山地だがワシントンでは広大な芝生の中で、こっちに一本、あっちに一本と生えているオークの大木が真亦になって青杢にそびえ立っているような姿は日本で見たことがない。ニューヨークからボストン迄の列車の沿線も晩秋には美しい紅葉樹が続いている。平地でも紅葉するための気象条件が良いのだろう。ドイツやオランダ、フランスではあまり紅柴樹を見かけないが、スカンジナビアヰナMでは紅葉と黄葉がいりまじって、広々とした農地の向うの森が輝くように彩られている。制かくても深く心に刻みこまれるような秋なのである。そして私にとって有難いのは、その辺に切ってもかまわないような木がいくらでも生えているのである。向花クレマチス昨年の秋、婦人画報社の依頼で、スウェーデンの花紀行に出かけたが、今年の十一月号にその記卓が叩頁にまとめて発売された。友人のパーティル・ヴァリ|ン夫妻の家やストックホルムの街の中にいけた花は、澄んだ空気、静かな件いの中ではより深い表情を湛えているように見える。丸葉の木は早くから紅葉する。そして亦く色付いた葉、賞のまじった亦い葉のすぐ横に減黙とでもよべばよいのだろうか、紅葉がより冴えて見えるようなくすんだ葉色がまじっている。様々な色がまじり合って紅葉するので丸葉の木に合う色の花は大変多い。作例には白いクレマチスを選び、花器は黄の地色に黄褐色のまじったものを使ってみたが、紅葉の色相がすっきりと鮮やかな一瓶にいけ上がった。色彩の豊かな丸葉の木は葉面をよく見せたいので作例のように表を前に向けていけている。7

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