テキスト1994
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のである。そのような階級の人達が究極の理想として求めたのが自然にとけこんだ寓居での閑雅な日々だったのだろう。私のいけばなにも、とくに立花にそのような境地を得てみたいものである。時々かすかにそれが感じられるものができることがある。だがまだ自分だけの思い入れに過ぎないようである。考えてみると私のいけばなは、組物歩』素材として造型するというよりも、遥か遠い昔に原始の人の見た夢を、中国の文人のように太古の生活には戻り得ないと知りつつ現代の生活の中でその平静きだけでも感じられるような植物的環境の中に身を置きたいと願って花をいけ続けている毎日なのである。〈4頁の花V花材桧扇の実花器褐色粕型変り深鉢桧扇は日本から朝鮮半色町、中国、印度にまで分布しているが、花は七月から八月にかけて咲き、その頃関西では夏祭の花という伝統があって生花としていけられ、その頃咲いた花の笑が初秋には実物花材として再び現れてくる。盛花や投入には実になってからの方が他の花材ととり合わせてもうつりがよい。作例は、ネリネとの二種いけだがUれ今aネリネ(ピンク)4

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