テキスト1993
78/145

杜若花型株分け灰色粕水盤杜若には現在品種が二O種ほどあるが、仲間の桜島裕の五OO種とくらべると大変少ない。そして花の色や形も花菖蒲は多彩に変化している。花の多彩きでは杜若は花菖蒲に及ばないが、生花としてのいけ方ではずっと変化に富んでいる。それは江戸時代に四季咲の杜若の栽培が普及し、同じ杜若でありながら、季節毎に表情を変えて咲く出生の姿を知るようになってからのことだろう。江戸時代も口世紀後半になると日本の花井園芸は広く庶民層にまで普及しはじめるが、それは植物学の急速な進歩を促すよ、つになる。同時にその頃社会的地歩を固め、趣味としていけ花を選んだ商人階級は、それ以前にいけ花多』暗んだ旧上流階級のように土に親しまず植物を観念的に意味付けて花をいけていた階層と違って、つい此閉まで土を耕していた人々である。いわば植物の生態の現実に携ってきた人々なのである。いけ花の世界にそのような人々が参入しはじめたのは非常に健全なことで、以後出生に関して精織を極めるようになって行く。自然離れが著しくなった現代、江戸時代の人々が積み上げた、いけ花における自然、それは季節と関連した植物の生態が日本人の美意識によって麿き上げられたものであり、そイEtiJ-4

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る