テキスト1993
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〈表紙の花〉クリスマスには胞の木を飾る欧米の人々。お正月に若松をいける私達日本人。共にキリスト教や仏教が渡米する以前の古代の樹木信仰が根強く生き残っている姿なのだろう。人聞が原始時代から古代までの長い歴史の中で形成してきた自然に対する感情は、西暦紀元頃出現した世界宗教がヨーロッパや日本に押しよせてきても、そう簡単に完全なキリスト教化や仏教化はできないで、占代以前から生活の場としてきだ風土に自然発生した生活慣習が未だに楽しく以衝いている。十二月に入ると各地の花市場では松市の日の他に梅、千両の市日が立てられているが、京都の生花市場に松市の前日制み上げられた各種の松の量を一度ご覧になるとよい。松が何般お正月になくてはならない花なのかさておき、表紙には枝若松に胤縦、白椿をとりあわせているが、花と実の紅白に松が加わることによって新年を迎えるという気分が高揚されるのである。梅挺は本来、晩秋から初冬へかけての実・ha物ε,肉花材だが、千両や南天の赤い実よりも華やかなので、基まで囲っておいて新年用に売られている。花村花器燥焼角刑t花瓶使った花器は、ロ月号で紹介した〈2fHの花〉枝若松梅擬白侍摺rけ硝ガラ子ス色の上に描かれた令直〕の魚のいづ令。ウルリカ・ヴアリlンさんの、「インカ」というガラスの水盤で、地のような生き物は奇妙な表情で泳いでこの花器の上には炎のように咲くグロリオーサがよく合っている。父はこの花を勝手にインド百合と名付けていたが、実際にインドを含む熱帯アジア、アフリカ原産の花で、日本でも明治末年から園芸組物として栽培され、州内FAFとよばれていた。作例では開花だけを残し、寄や色の浅い半聞の花を切りとって、この花の強い鮮紅色を強調している。こういういけ方をすると、かなりの本数を必要とするが、稽古にl、2本使う場合には茎の先端の奮まで残し、柔かくて美しい緑色の葉も生かし、グロリオーサ全体の姿が形良くおさまる工夫をする。だが蔓性の花材なので長いままいけるには盛花より投入の方がいけやすい。作例には中間色に近い緑のユーカリをあしらって感触をやわらげた。花村グロリオーサユーカリ花器ガラス水盤ピンクと白を基調にデンファレと天門冬のしなやかな曲線を生かす。花材デンファレ白パラ天門冬花器細口陶花瓶〈3頁の花〉3

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