テキスト1993
137/145

ひたけて徐々に盛り上がって行く十二月二十五日のクリスマスを人々はどういう想いでその中に浸っているのだろ、っ。表紙に使った赤い服を着て手をつないで踊っている子供達は、その季節の風物を写したものなのだろう。素朴なクリスマスの飾りである。〈表紙の花〉花材デンフアレ花器淡紫コンポート背丈が8mほど。赤い服を着て手をつないで遊んでいる五人の子供達の人形を、蝋ろ今ぞ燭〈を灯した花の下に並べてやると、かわいい妖精のように見える。そして蝋燭の火が揺れると子供達の影が薄暗い部屋の中で踊りはじめる。私達は旅先でよく人形を買う。これもスウェーデンではありふれた人形なのだろうが、降り積もった雪の中でのクリスマスを楽しむ子供達の嬉しそつな感じが明るく表現きれている。そしてこの森と湖の国の十二月の季節感を美しくとらえられている人形なのではないかと思う。花材グロリオーサ花器白斑文花瓶明るい障子の前に花を飾ると、一輪の花、一枚の葉、そして茎の線までくっきりと浮かび上がる。〈2頁の花〉蝋燭赤・緑カンガルーポl〈3頁の花〉花器灰白色紬花鉢グロリオーサとカンガルーポーというとり合わせにはこんな背景がよくあっている。この投入は、配色がよくて花も生き生きとしているが、形にこだわりすぎると生気を失うことがあり、配色に神経を使いすぎるとただ締麗なだけで、とりとめのない花型になってしまうことがある。いけ花には水々しい生命感が大切だということがよくわかっていても、中々その大切なところをうまくいけきれないものである。障子の閉められている冬には、その明るきを背景にしてカラフルな花を飾って温かく華やかな雰囲気を作り出したい。花材白椿パンダ冬の椿は葉がとくに美しい。春の若葉は夏の聞に深緑に成熟して、初冬花が咲きはじめると、葉の鈍い艶が花色に映えて、木立ち全体が重厚な落ち着きを見せる。この作例には白椿に赤紫のパンダをとり合わせているが、渋い深みが感じられるいけ上がりである。蕃破は葉や花の形状が椿に似ているが、厚みがないので、このパンダをとりあわせると、もっと軽く華やかになってしまう。それが椿の持味なのだろ、っ。3 白

元のページ  ../index.html#137

このブックを見る