テキスト1993
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一一片である。紅葉も散り終って初冬に入る頃、一時閑かな日が続く。寂しいような、取り残されたようなれ持がどこかに潜んでいるのは、春に幕の上がった自然の対舞釘の芝屑も終り、胸のっちに余韻だけ残して、あたりがひっそりとしてしまったせいかもしれない。だが活葉や枯草の下では、刷物達がもう次の春の演しものの準備を始めている。そして人間達も十二月に入ると一年を締め括って、次の年の幕明けへと気分を転換しはじめる。仕事は普段の月の何倍か忙しくなり、歳末の売出しにまき込まれ、忘年会に何度もつき合わされた上に、クリスマスプレゼントまで用意しなくてはならない早々と秋の暮れるヨーロッパでも十一月十一日の聖マルチンの祝日のあと、十一月末の日曜日の第一待降節の日からクリスマスの準備が始まる。宗教上の行事なので、日本の歳末のような訳のわからない喧騒の渦にのみこまれることはないにしても、クリスマスセールの人出は日本と変りないように見える。私が一度体験してみたいと思うのは、ドイツや北欧の村の十一月と卜第一待降節から第四待降節までかクリスマスと歳末2

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