テキスト1992
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貰花海芋株分け花器淡緑色陶水盤Iミ蒲は京都でも北山の麓の併脇町の近辺の湿地でよく見かけた水生植物だった。古くからいけ花に用いられたのも洛外の風情として洛中に住む人々の心の中に美しくとりこまれていたからだろう。蒲のある水辺には河骨や沢潟が見られる。そのような季節の情趣がいけ花として洛中の家々に飾られ、一年の一蹴ずつを即時縦かく味わいながら暮らし続けてきたのである。蒲は蒲黄が散って茶色の穂が大きくふくらんだ時が最も蒲らしさを感じるが、この作例のように葉の美しいのはその前のひとときである。背を高くいけて、葉を素直にのび上がらせて涼しげな花をそえる。夏姿に咲きはじめた社若も良いが作例には湿原の黄花断苧を選んだ。品良く立ち上がった蒲の鮮緑色に対して黄花海芋が広い水面に明るく映り、濃緑色に白斑の紋の入った黄花海芋の葉が株分け挿しの効果を一層はっきりと演出している。j甫7

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