テキスト1992
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あせ淡いピンクから、やわらかい紫ヘと花の色が右から左へ移って行く。溢れそうな潤いを蓄えた低い茎に咲きつめたヒアシンスの花はふっくらと重い。支えの柱の上で、細くしなやかな茎の先に咲くスイートピーの花は、薄紙のように微風に揺れる。同じような淡い色の花なので、はなびらの厚みや潤いの差、一輪の重みの違い、固さ柔らか含を絵に描きあらわすのは難しい。いけ花では‘生きた花そのものを使うので当然その花の生命感が伝わってこなくてはならない筈である。ところが全くそれが感じられないいけ花もある。まず花の扱いが無神経な場合には生ぎ生ぎした姿が保てない。次にとり合わせが悪いと、いくら形を工夫してもそれぞれの花の美しさが引き立たない。そして花をいける技巧が大切なのだが、それは稽古に年月をかける以外に上達の方法はない。要点だけを手短かに習うべ術はないのである。云ってみればごく当り前のことなのだが長い年月の間にそれを忘れて焦ることもある。いけ花を習い始めるということは‘花との長いつき合いの始まりである。花材ヒアシンスとその葉スイートピー花器黒塗り盆二枚日蔭蔓花との長いつき合いす11

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