テキスト1991
26/147

‘ν そこで純白の胡蝶蘭と、少しくす早春芽吹いた柳の柔らかな粧やを見ていると、いつの間にこんな用意周到な冬の過ごし方を身につけたのかと、その生の営みの不思議きに舌を巻いてしまう。赤芽柳の冬芽の赤みも美しいが、寒気に赤黒く色付いた枝の上で皮を脱ぎ、銀鼠色の花穂が顔を出したときの変身は更に美しい。その後花器にいけられたまま日ごとに大きく生長して行く。上品な銀鼠色の花穂を出した赤芽柳は枝の色が渋い暗赤色なので明るく鮮やかな色彩の花とも配色しやすんだ朱色のパラに赤芽柳をそえてみたのだが、一緒にいけ上がってみると、無季節的な洋花にも早春の息吹きが漂いはじめ、和室の床の間にもおさまりのよい一瓶ができ上がる。先代は季節感に乏しい熱帯系の洋花に、同じ熱帯産の観葉植物の葉をそえると美しいことは美しいが植物園の温室に入ったようで雅趣がないから何か日本的な季節の枝物花材をそえたいと云っていた。和室のいけばなにはそんな配慮も必要であろ、っ。花材胡蝶蘭赤芽柳パ一フ花器耳付紺色紬花瓶柳の芽11

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る