テキスト1990
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こうリゃ比也4R1 この作例は初歩向きに枝数を少なくいけた桃の生花である。校数は分かれ枝も勘定に入れて十九本、行の花型になっている。すんなりと伸び上がった枝は梅の楚に似ているが材質も柔かく、形にも柔軟性が感じられるので、いけ上がった姿に優しきを与えたい。そして現在の三月三日は旧暦の二月初旬なので、現在売られている桃は加温して開花期を早めたものである。自然開花期のものとくらべると花が落ちやすいので、束をほどくときにはからまった枝を丁寧にはずし初冬に落葉し、厚い殻に包まれて寒の内を過ごした行李柳の花は、早春の気配を感じると逸早く冬装束を脱ぎすてて、花穂が姿を表わす。細枝に咲く来舎のような花の自然に謡り動かされてほころびる様は古くからいけ続けられてきた。一般に出まわっている芽吹きの行李柳には側枝が多い。一瓶にいけるときの本数が少ない場合には短い側枝をつけたままいけて出生の姿を生かしてよいが、本数が多い場合は側枝をとっていけないと見切り(交差)が多くなって形がまとまらない。作芽吹き行李柳rg真真てから脇にひろげ、一本一本よく見定めて、長きをきめ、それぞれの形をつけていけはじめる。桃は雛段の横に飾られるので花器の色もその場によくあいそうなものを選びたい。花型行型花器濃紺彩深鉢例にはお本の行李柳を使っているが、半円を描く内副によって、花穂の柔らかきに対応させてみた。留の沈みや副の沈みには短い側枝を残した枝で厚みをつけている。花型留流し花材芽吹き行李柳花器煤竹寸筒花材桃6

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