テキスト1990
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七竃内副流し花器白磁深鉢日本の秋と共に紅葉の美しいのはアメリカの東海摩だろう。ワシントンのアlリントン墓地の広大な芝生の上に立つオークの大木の紅葉。ブロンクスの植物園には幾種類もの紅葉樹、黄葉樹が高々と繁り、木の間から見上げる秋空の美しさは日本より澄んでいるようである。ニューヨークから北への道には秋の錦色がつらなり、見とれているうちにボストンについてしまう。樹木の秋の色は春よりも派手なのかもしれないし、実を沢山つけた柿物は、その一年に勝ち抜いたような表情をしている。春の芽出しから暑熱や大風におびやかされながら力を蓄え、やがて訪れる厳しい冬を前にして、それに耐えぬく気構えを見せる大木は私達人間にも頼りがいのある存在に見えるようである。紅葉をいけながら想うのはそんなことであろうか。この世罷も相当な大木の一伎であろう。静かにいけてみた。6

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