テキスト1990
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からしょう蓮お1990年9月1日発行(毎月1回1日発行)桑原専慶流家元発行第三種郵便物認可桑原専甍流いけばなテキスト327号定価五00円初めの頃は‘お教理のようなつもりでつき合っていた祇園祭りも此頃では行事の諸役を手伝った上、浄妙山のお供の行列にも加わらないと何となく収まりがつかないような気持になってきているようである。七月に入ると忽々に町内の行司役の家で吉符入り。天照皇太神を祀った祭壊の前で柏手を打ち、お神酒を頂いてしまうともう逃げられない。京都は他の大都市とちかって代々その町内に住み続けている家の比率か非常に高い。現在のような道路事情にならない頃、夏は家の前に縁台を持ち出して夕涼みをしていたし皆が子供時代からの遊び仲間だったのである。夕涼みのなくなった現在、での宵山の三日間、昔の縁台の語らいか復活する。他所からこの町内に入ってきた私にとって、その話題には特に興味深い。祇園祭りに加わる室町界隈は昔から呉服商の集団で構成され、地域も京都のごく狭い一部でしかない。仕事を通じて複雑に利害か絡み合い‘隣り合い‘向かい合った家々の間には時として反目の種になることも起きるだろう。そして京都人の暮らし方や性向についての批判も多い。京都は住みにくい街かもしれない。だがそんな街で世界の三大祭りの―つが年々盛大に続けられて行く。お祭がすむと土用に入る。鰻を食べ終るともう次にはお墓の掃除、そして和尚さんがお経を上げに来て下さるので仏壇もきれいに飾っておかなければならない。私と和則は袢を着て、のんびり‘にこやかに祇園祭りの行列について歩いているか、京都で京都十四日から十六日まらしく暮らして行くには‘毎年かなりの行事につき合わなければならない。そしてつき合っかぎりは楽しんでつきあえるような心がけが必要なのかもしれない。八11頁上の花>アンスリュームととりあわせたのは小型のエリンジュームで茎まで紫色である。エリンジュームは荊に似ているが芹科の草花で原産地はスイスやイタリアの標高一五00ばから一九OOMの山岳地帯である。日本には明治の中期に渡来しているか、いけ花用の切花として市場に出廻ったのは最近のことで紫色と淡いグリーンの大きな勤のような花か多く作例のような小さな花の品種は見かけたことかなかった。美しい紫色なのでアンスリュームは白い花を選んでエリンジュームの色をひき立ててみたが、少し淋しい配色なので温かみのある淡いピンクのアンスリュームを一輪挿し加えた。エリンジュームの一本は立姿で茎の色まで見せ‘もっ一本はマッス状の花を正面に見せてその特色を見せている。花材エリンジューム(小花種)ァンスリューム花器灰白色掏三稜壷八11頁下の花>土用の頃によく通った一口の連池はなくなってしまったが、持主の内田さんは観賞用の蓮だけは未だに栽培し続け品種も多い。毎年蓮の季節になると切らせてもらっているが今年は染付の水盤に鉄線といけあわせてみた。連は水揚げしやすいよう低くいけてから鉄線二色を這わせる。花器染付水盤花材鉄線いしあ・つい梅雨明けから土用にかけて

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