テキスト1989
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第三種郵便物認可桑原専慶流いけばなテキスト制号1989年8月1日発行(毎月1回1日発行)桑原専慶流家元発行ネリネは繊細な美しきを持つ花だが、一本一本見るよりも、何本かまとめていけた方が、よりこの花は美しい。そして同じ科の彼岸花が、秋の野に炎の走るよ、つに群生する姿を見る頃、毎年のように季節のうつりかわりの微妙なしくみをル々と感じる。ネリネの本来の開花は秋の末なのだが、花屋ではそれ以外の季節にも国内で栽培されたものや輸入品が売られている。だから彼岸花のように季節は感じられないが、ピンク系のネリネは愛らしい花として評判がよく、とくに茎が長く、しっかりしたものは相当大型ないけ花にも使うことができる。この作例では淡いピンクを引き立たせるために、花弁の大きい白花の鉄線を三輪前の方に低く一一追わせ、奥行にそえた濃紫色の鉄線で更にネリネの花色を浮かび上がらせている。細く、しなやかに伸びるネリネの茎は、多数いける際にはできるだけ長くとり、立ち並ぶ茎の線をはっきりと見せたい。そのまばらな水際をととのえるために鉄線の茎はできるだけ丁寧に癖を直して立ち上がりを整える。花材ネリネ鉄線(白・紫)花器彫文入陶花瓶定価五OO円ネリネ

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