テキスト1989
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幸会サマ長ピ仕掛は、日本各地の他、朝鮮半島、中国東北部、シベリアにも分布しているが、日本では自然群落が少なくなった。そして花菖痛のように公園や神社仏閣の庭にもあまり植えられていないので、都会ではその生態が見られる機会は殆どなくなってしまったようである。だがいけ花では、立花の初期から社若の方が花菖蒲よりも花材としてとり上げられることが多く、杜若一色の立花はあっても、花菖蒲一色という立花は立てられていない。そして江戸時代に作り出されたと云われる「四季咲」という品種の杜若が普及してからは、早春から初冬に至る季節ごとの杜若の生態が詳細に観察され、季節感を美しく表現するいけ方が絶えず考え続けられてき作例には花を十一輪使ってみたが葉株はそのままのものを組み変えずに八株挿し、あとは正面から見える隙間を埋めるため、二枚か三枚を組み合わせた低い組み葉を四ヶ所に挿し加えた。花の優雅な紫色を夏の室内で見せる場合には、葉数はこの程度に風通しよく、そして花器に溢れるほど入れられた水を美しく澄みきらせたい。花材社若花器備前焼水轄夏の社若た2

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