テキスト1989
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J』賞花のストレリチアをいけている間に感じたのだが、ごく身近かにある、いわゆる洋花、一般化した洋花の中には、何度かいけている聞に、いける興味の薄らぐ花がある。多分それは渡来してからの年月が浅い上、切花として私達の生活の周囲から遠く離れた所で大量に生産されているからだろう。作例は季節柄、清涼感をもたせるように緑の葉だけ二種をそえ、花器に合わせて奥行をあまりとらず横拡がりの一扇形にいけてみた。花材ストレリチア(黄花)花器舟型陶花器京都の真ん中、四条烏丸から東を向くと、祇園さん(八坂神社)の後に連らなる東山は、今年も新しい緑に総われはじめている。真後をふり向くと、四条通のつき当りに西山が見える。そして五月晴れの爽かな日にはその山並みが意外な近きに迫っていることに気付く。北山は東山、西山とくらべるとやや遠く、春霞の彼方に惚い密の山影が浮かんでいる。南はお日様を選る山もなく、畑地が続いて行く。京都の街は、季節、季節に優しい.Hな−かぎ」AよI、、う足。来γlたtv、〈表紙の花〉モンス−ア一フ著義・縞著義自然の彩りに固まれているのに中古小の辻、小路には案外緑が乏しいと思う人も少なくないだろう。だが中京の家々の奥まった中庭では、四周の自然と歩みを揃えて新緑が豊かに芽生えている。百年、二百年も昔に植えこまれた老樹が、その後も年輪を重ね、飽きずに繰り返される手入れで住む人の心に適った件いを見せている。今冬は暖かな日が続いたので庭樹も早くから花が咲いて附葉が生長しはじめ、板屋楓の心地よい葉影が居間を翠色に染めている。板屋楓の緑に包まれていると、次々にとりあわせてみたい花が浮かんでくる。まず表紙の花として鉄線をえらんだ。いちばん好きなとりあわせであり、何度もいけたし、そのことを書いても来た。別に目新しい花型を作り出したいとは思わない。今年もこのとりあわせに巡り会えたというほのかな安堵感。慌ただしい日々の暮らしのっちに、こんないけ花がほんの少しでも織りこまれていたならと思って表紙に使ってみた。なるべく自然なままといけた投入である。花材板屋楓鉄線(白・紫)花器青緑彩花瓶のんびり3

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