テキスト1989
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里樫留流し花器濃紺深鉢御室の仁和寺、造幣局の通り抜けで京・大阪の花見は終る。そして季節は葉桜から、新緑に移って行く。数えてみると、初冬寒桜から、晩春里粧の終るまで半年近く折々の桜をいけていたことになる。院のいけ花の代表的な品種は、まず初冬の寒桜。枝先に紅葉が散り残り、その下にぽつりと咲く花の風情は静寂そのものである。彼岸桜の咲くまでにも二・三種の桜が出てくるが、早春小さな花を細枝一杯に咲かせる彼岸桜は、花見の近いことを予告するように見える。里桜は桜の中で最も濃艶で厚みがある。そして校先までかなり太いので大枝のしっかりしたものを真の半分の高さまで立て、それに真をそわせ、かなり大型にいけ、房になって咲く花が一塊りにならぬよう間隔をあける。控には真紅の薮椿をそえた。吋\It:6

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