テキスト1989
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行型花器天目柑水盤春、紅紫色の花を咲かせる頃のかわいい紫蘭よりも、実が完熟して、葉にも少し枯色が出はじめる季節の風雅きを好む人も多い。蘭科の中ではとくに繁殖しやすい種類なので日本各地で野生しているし、庭に植えておいても毎年ふえ続け締麗な花が咲く。作例には四本の紫蘭を用意して、そのうちの三本を使っている。紫蘭は一本の茎に、縦繊のある葉が三枚から五、六枚が下部が鞘になって生じ、五月頃その中心から細く堅い花茎がのび上がり五輪ほどの花を咲かせる。落花後結実するが、秋に実が完熟する頃まで残るのは一、のである。作例は、葉が四枚と三枚に、実がそれぞれ一個ずつついた二株をいけてみた。葉は出生のままでは形がまとまらないので向きを変え、折れ葉を内副と見て真、副、胴、内副で一株とし、留側は総囲、控の長い葉の先をむしりとって虫喰い葉に見せて花型をととのえた。二個位のも蘭止じ卦ミ6

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