テキスト1989
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ゎずさざすす庫とさ秋草イデア〔西樹出品立花〕”去りゆくままに:·……と題していけた秋草の立花である。時にはめまぐるしく過ぎ去って行く秋もある。Lだか秋は閑かに、そしてその閑かさの中で、自然の刻むひそかな季のね音に心を傾けたい。私達の周囲には、一年のうちで最も好きな季節を秋と感じている人が多い。月明かりに波打つ薄の穂、野道を埋めつくす彼岸花、高原の様々な野草。その中木々が紅葉しはじめる。春を少年期の美しさに例えれば‘秋は成熟期の静かな表清とでも云えるのだろう。一見佗びしそうに咲く秋草も、実は夏の恵みを豊かにうけていながら控えめな装いで私達にその姿を見せているにすぎない。一度秋草立花の大作をいけてみたいと思っていたが萎れやすい秋草を使って六日間の会期を過ごすには大変手間がかかる。毎朝手直しに通っていると、いけ上がった時‘これで良しとした立花にもいくつかの不満足な点が目につきはじめ、次の機会にはと色々な想いが頭の中をかけめぐる。花材蔓膨餌薄出釈和麟躙百合の実杜鵜草花器「膨風」宮下善爾作その他

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