テキスト1989
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杜若枯蓮二種挿し花器淡緑柑水盤残り花に惹かれるのは、やはり晩秋である。どの花も最盛期が過ぎれば残り花とはいうものの、すべての花が次々と盛りを迎える春には磁あの風情はきしてとりあげられることがない。過ぎ行く季節をなつかしむ気持は秋口に感じはじめ、晩秋にその情が深くなる。四季咲の山伯郡には、抑制のいけ方があり、それぞれの季節感を深める方法として多くの伝承が残されている。だが実際には、初冬でも青々とした勢いの良い杜若もあり、無理に季節の約束事にあてはめたくないこともある。この杜若と蓮の葉も、洛南の栽培地から切りとってきた、そのままの姿をいけ上げたものである。初冬のような感じに見えるかもしれないが晩秋最後の残り花である。残り花7

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