テキスト1988
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ひざ夏の間葉陰にかくれて生長を続けていたポ酌の実も、秋口には丸々と太って目につくようになってくる。植物図鑑の説明によると、球形の林檎に似た堅果を結ぶと記されているが、凸凹で歪な形をしたものが多く、作例のように形の整ったものは少ない。とくに野生の恥ホ酌は、日当りのよい山の斜面で、周囲の秋草にまじって、わずかな重みにたわんだ細枝に、黄ばんだ梅干のような実をつけている。中国から渡来し、庭園樹として植栽きれた木瓜にも私達は草木瓜の野趣を求め、実付きの木瓜は秋の草花をとりあわせて季節感の深い花をいけよ、っとする。その場合、まずこれから句に入る秋菊を実付きの木瓜のとりあわせとしてみるのがよいだろう。菊は淡色と濃色、大輪と小輪をえらぶと立体感、奥行がとれ、秋色に静かな豊かさをとりいれることにもなる。陽射しが秋めくと、花の保ちもよくなり、このとりあわせも一週間をすぎれば、木瓜はそのままおき、他の草花と菊をとりかえてみるのも木瓜をより深く知る稽古ともなる。花材実付きの木瓜菊二色花器染付花瓶木瓜の実ι3

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