テキスト1988
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この二・三日晴天が続いているので、ビルの屋上から三方の山が、いつもよりくっきりと凡渡せる。東山は木々の形が見わけられるほど近く、西山は樹林と竹散の色分けが斑紋状に北から南へ続く。北山は少し遠く見える。そして山の連らなりが深く、なだらかな段線が幾重にも北へ、北へと重なり、医の中に消えて行く。治北も市街地に接した一山を越えると、初夏には未だに笹百合が見られる。栽培の難しい笹百合は、五月から六月にかけて、山で採集されたものが都市に送られてくる。大きさはまちまちで、ωででぐらいの小さな花もまじっている。淡いピンクの花色は、パラや有薬のような派手な色彩の花材ととりあわせても美しいが、やはりその花個有の風情を考えれば、素朴な自然趣味の枝ものとの出合いが人の心をひきつける。明るい山の尾根で一桁に育った易相と花瓶に挿すと機嫌よく優しい奮が聞く。その表情に濃紫の鉄線をそえると、山の初夏の風趣が居間の片すみに移ってくる。夏櫨はのびのびと、そして風通しよくいける。花材笹百合鉄線夏櫨花器柿粕水盤洛北の山々からから犯5

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