テキスト1988
41/144

さん?ゅうげ立ち枝を使って高さを出す。上には季節のとりあわせとして、薮椿を小きくいけてみた。日本の野生草花のうちで、花の美しいものの相当数が金鳳花科に属している。それらの野生種は園芸家の手によって野生状態を脱皮して華麗に変身したものや、野山の自然の息吹きをとどめながら花色が鮮かに、草丈が大きくなったものもある。園芸植物としての苧環は、寛政時代(回世紀)に松前(北海道)から京都に送られ栽培化されたものであるらしい。ヨーロッパでも中世末からルネッサンスごろの絵画に西洋苧環が登場している。いずれも原種は小さな青紫色の花だったがその後の栽培技術で花色はふえたが、現在の多色な苧環は北米原産の苧環をもとにして作り出されたものである。多彩になったとはいえ、もとの可憐な風情をとどめているので作例のように紅白のポ配など春の和利の根もとにとりあわせると、山野の自然とは別種の、平安朝の庭園の春のような美しきが感じられる。この二種だけの上品なとりあわせでは少しもの足りないので、菜の花〈苧環〉おだまきをつけてみると、より身近に飾っておきたいいけ花になったようである。花材苧環(おだまき)木瓜(紅白)菜の花花器春慶塗大盆表紙のいけ花に使った花器は柳原睦夫氏の作品である。柳原さんの作品は好きなので、機会あるごとに見に出かけているのだが、うまく使いこなせそうにもないので欲しいな、と思いながら手が出せずに帰ってしまう。が、はじめて満足のできる一作ができたよ、つである。とりあわせの条件として、当然のことながら花器の色によって美しきをひき立てられる花をえらばなければならないが、実際にこの花器を使ってみると、花器の色は優しいのに形が意外に強い。そのような条件にあった花材として、ふくよかで優しげではあるが強い生命力をたたえた猷苧。柔らかい淡紫の大きな球形のギガンテウムがよくあっているようである。花材海芋アリウム・ギガンテウム花器彩文花瓶柳原睦夫作この花器も随分前に買ったものだ〈表紙の花〉3

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る