テキスト1988
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υM宮、いんうっ〈連麹・椿重切筒〉四方にひろがった留郡の、のびのびした枝に、あの鮮かな黄色の花が一斉に咲きはじめると、その周囲だけ陽春の日射しが、より明るく輝いているように見える。全く競りのない花である。その故か、長く陰替なヨーロッパの冬の終りは、「春は連麹で始まり」という園芸家達の言葉通り四月上旬のロンドンやパリの街にはその明るい黄色の花が咲きはじめ人々は久しぶりの陽光を求めて戸外にとび出して行く。連麹の自然開花は四月上旬なのだが、切花としては、一月中旬以後に枚を切って水に漬け、同度から加度の室内に入れておき、日目前後で花が咲くのを使っているのである。生花の花材としては、雪柳めようにゆるやかな曲線を描く横枝、或は垂枝の姿が古くから好んでいけられている。枝の性質は中空でややもろく、太枝は携めにくいが、切り撰め、或は模をいれて形をつける。細枝は少しねじりながら曲げるひねり撰めで形をととのえるがいずれにしても手荒い扱いは禁物である。垂体にいけることが多いが、作例のように二重切簡の下窓に挿す場合立ち昇りいけになるので、副の枝先をやや下がり気味の形をとり、真は白2

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