テキスト1988
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秋色第三種郵便物認可桑原専慶流いけばなテキスト305号昭和63年11月1日発行(毎月1回1日発行)桑原専慶流家元発行定価五00円初冬を間近にひかえた一時、洛中洛外の紅葉の名所が人出で賑わう。そして落葉の寸前、山々の緑が燃えたつような紅に変わるこの季節、自然のからくりの面白さに私達の花ごころがゆり動かされる。植物の葉は、日中葉緑素の働きで澱粉を作り、夜になるとそれを糖分に変えて必要な部分に送り出す。ところが秋が深まって夜間の気温が低下すると落葉の準備のため葉のつけ根に離層ができて糖分が送り出せず余分にたまってしまう。その余分にたまった糖分が葉の黄色素を何色かの複雑な赤色素に化学変化させ、様々な色かいに紅葉させるのだそうである。そして昼夜の温度差が激しいはど紅葉現象は急速に進行して行く。自然の染め上げた紅葉は、その一葉、一葉が微妙に色が違っていて、色の豊かさ、という点では花より変化が多い。とくに満作は、黄、朱、赤、濃紅色から更に赤黒い葉までが一枝についている。作例ではその色相の変化をはっきり見られるように、葉を前面に向けて並べ立ててみた。そしてとりあわせる花も黄色のネリネだけにし、花器も黄色を選んで明るい秋色を求めた。花材満作ネリネ花器黄色釉長方形水盤くれない

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