テキスト1987
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日本に菌香が渡来したのは近代以後のことだと思っていたが、すでに平安時代、久札乃於おも毛という名でよく知られていたそうである。以来薬草として広く用いられてきたが、いけ花にはあまり利用されてこなかったらしい。切り花として花屋で売られるようになったのもごく最近になってからのことである。菌香の花は傘状に開く女郎花によく似ているが、菌香の属する芹科の植物もこのような形をしており、それを複散形花序とよんでいる。又芹科の植物は一般的芳香性の精油を含んでいるので、同じような形の女郎花のような悪臭は発しない。花材として売られている菌香は葉がとられているが、その葉の形は細かく羽状にわかれる複葉で、小葉は糸状に分裂しておりアスパラガスのように見える。花材としての特徴は、傘状に聞く花の形と共に鮮かな緑の茎にあり、作例の右端に挿した一本のように不定形に曲がっている所にもある。作例でもその特徴を生かすように、茎を高くとり、左下を前方に長くっき出したら5輪の貰透百合で、右上にのび上がった菌香とのバランスをとっている。色彩は二種の黄色の花に加えて花器も同色のものを使ってみた。花材菌香黄透百合花器黄色紬横長角鉢箇・7い香くれ伺今eよ8

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