テキスト1987
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ムやま百合の生花は一種挿しでもかなり厄介なものだが、枝物との交挿もなお一層の手際を要する生花である。とくに携めのきかない笹百合は、枝ぶりに変化の多い夏械の中にどっ組みこんで行けば良いかよく考えでかからなければならない。交挿というのは二種以上のとりあわせでいける生花ではあるが、通常は枝物花材を真、副、胴に、草花を留、控にいわゆる根締とするところを、投入風に枝物花材と草花を同等に扱って、自然風な感じをもたせる生花と云っていいだろう。季節がめぐってきて、明るい山の尾根のあたりに夏櫨や深山南天のような低い濯木が若葉をひろげる頃、その聞から笹百合が優しい顔をのぞかせる。すこやかにのびた笹百合は根締として短く使いたくはない。山で見た感じをあらわしたい場合、与えられた笹百合がどういう形に挿せるかを考え、その形によって夏櫨の使い方を考えるのも一方法である。作例笹百合は副と副の後で沈みになる二本、真囲に向きそうな茎の膏曲した一本、花が前を向いた一本が胴に向きそ、つなのをたしかめてから夏櫨の使い方を考えた一例で、花剛は草の真流しとなっている。花器赤褐色焼締花瓶夏樹笹百合9

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